橋川 敏男作詞・作曲
(昭和十九年 第四十期)

山根 和明・藤本 信一作詞

山根 和明作曲/山本 寛之編曲

我が青春の椹野川
一、

春を弔う落英の
朧ろに流る椹野川

追昔の影長くして

逍遙の児の胸如何に

椹野川の緑の岸辺

春の訪れ告げる花を

愛する人の髪に飾った

若い日よ
遙かに望む鳳翩も

紺碧空に照り映えて

若い二人を見守るように

輝いていた

二、

逝きて帰らぬ人の世の

流れの傍に佇めば

そぞろに浮ぶ幻は

去りし栄華の夢の跡






三、




友よ知らずや昏冥の

嵐の中に身を殉じ

黎明の鐘乱打せし

若き命の揺籃ぞ

夏の河原に葦燃えて
せせらぎに水鳥は遊ぶ
遠き峰より流れ来る
水恋し
月日は無常に過ぎて行き
ああ青春の感傷も
強き日ざしにいつのまにか
色あせて
四、 樹間にこもる紫の

薄明に澄む物思い
消えゆく鐘に目覚むれば

弦月白し鴻の峰


いつの時代も変わらずに
椹野川とうとうと
人の喜び悲しみも
流れゆく
いつかどこかで逢ったなら
時を忘れて茫然と
ただ君を 君の瞳を
見つめていたい
五、

山都に霞む夕時雨
去りし山(みち)さまよえば
()びて鬱たる老(さん)
降り残したる古寺の塔

六、

すさびの文をたずさえて
巷を出ずる高原の
悲風(しゅく)たる叢林に
武士(つわもの)(ども)が夢のあと

七、

顧みるべしわが友よ
あの山河に彼の森に
若き瞳の先覚が
憂い歌いし悲歌慨歌

八、

仰ぐ遙けきさみどりの
秀峰(とつ)たる鳳翩に
何を(はら)むか油然と
湧く白雲の昼の夢

九、

ああ渺々の蒼冥に
悠々流る白雲よ
悠遠臨む吾が胸の
たぎる希望を託さなむ

十、 集え同胞(はらから)靉靆(あいたい)
霞たなびく吾が園に
いざや語らん霜嶺に
咲ける理想の白芙蓉